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2013年6月23日 (日)

血染めの勇姿

 94年にPヴァインから発売されたCD「血染めの勇姿/ワン・ホン&ツイ・ジェン」。当時アジアンポップスのブームがあり、雑誌「ポップ・アジア」が創刊されたりもして、面白いアルバムに解説と歌詞の翻訳をつけて売り出されたシリーズの中の一枚です。まだインターネットが普及していなかったので、ジャケ買いに頼るだけでは当たりはずれが激しかったことを考えると、ありがたいレーベルでした。

 実は私もこのアルバムの歌詞の翻訳に参加していました。日本での発売後にCDのサンプル盤をもらったのですが、誰かに貸したきり返ってこないままになっていました。時々思い出してはちょいと気になっていたのですが、ヤフオクに出品されたよというアラートが。入札者1名で落札しました。¥1,500-。当時の定価はもう少し高かったような記憶がありますが定かでは有りません。
 なぜこのカップリングが誕生したのか?との疑問がわきますが、大陸ではなく香港で発売されたことを考えると、「百名歌星」のなかでも一番売れた二人の代表曲だから売れそうだよ、という流れと、「血染的風采」「一無所有」は天安門に集結した学生達が歌った歌として注目された、という流れとが推測できます。おそらくは後者が有力でしょう。香港での発売は90年で、89年の崔健ファーストアルバムはもうすでに相当数売れた後、セカンドアルバムはまだ発売されておらずでちょうどいいタイミングだったかもしれません。
 さらに大陸ではまだ普及していなかったCDにもしておいてくれたおかげで、今まだこうして聞くことができるのもありがたいことです。
 このアルバムに収録されている「一無所有」と「不是我不明白」は崔健のファーストアルバム収録のものとは別バージョンで、「百名歌星」に出演した歌手のオムニバス盤のために録音されたバージョン。本格デビューから2、3年前の崔健の声はやや甲高く、テンポは速めで軽めな感じ。演奏にも未熟さが残ります。このレベルからあのファーストアルバムの作り込んだ音にまで持っていった執念には凄まじいものがあります。
 また「最後一槍」の歌詞つきバージョンですが、ライナーには「作詞:王貴」とあり、「えっ、あの歌詞は別人の作?」と意外な発見が。これまで見落としてました。ちょっと調べてみたいところです。
 アルバムタイトル「血染めの勇姿」は林穂紅さんの翻訳ですが、超かっこいいこの日本語タイトルに私は惚れ惚れします。「最後一槍」と同様に、もともと中越戦争がテーマだったのが、学生運動によってアイロニカルに解釈された、その精神は「一塊紅布」に通じていると思います。
 林穂紅さんは私よりもずっと以前から香港、中国のポップスに注目していた方で、彼女のやっていたビヨンドのファンクラブに私も入っていました。そのファンクラブの会報誌がまた充実していて「こんなのが作れたらいいなあ」と憧れていました。林さんは長征倶楽部にも入会してくださり、その後音楽之友社から「チャイニーズポップスのすべて」という集大成本が出たときには私も参加することができ、とても光栄でした。
 ライナーの解説にも有る通り王虹は日本に滞在していたことがあり、そのときに面倒を見ていたのがこれまた中山眞理女史。私が中山事務所に入社する以前のことだったので、王虹に会ったことは無いのですが話にはよく聞きました。実はその中山女史から数日前に電話をもらったのですが、近々、渋谷に「火鍋屋」を開店するそうです。食べに行ったら当時の話がまた、聞けるかもしれませんね。
・・・というわけで、意外にも、一枚で何度もおいしいアルバム、でした。
 

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