書籍・雑誌

2017年3月 4日 (土)

特別寄稿!「Crashing The Party: An American Reporter in China」

 長征倶楽部メンバーで、いつもお世話になっているジャーナリストの権田潤さんより非常に興味深い内容の特別寄稿(書評)を頂戴しました。ありがとうございます!そのまま掲載させていただきます。

  この本の著者は90年代前半に北京の英字フリーペーパー「Beijing Scene」に参加していたようですが、当時崔健は何度かこのペーパーの取材を受けていて、とてもセンスの良い内容だったのが印象に残っています。
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≪新刊紹介≫
Scott Savitt. Crashing The Party: An American Reporter in China. Berkeley,CA: Soft Scull Press,2016

 北京を拠点に改革開放後の中国を最前線から伝えた活動歴を持つ著者が、中国で過ごした1983~2000年の体験を、様々な人物との交流を中心に綴った本で、Rock and Roll on the New Long March と題された第9章が崔健の登場がもたらした衝撃と崔健との会見記に充てられており、諸兄にご紹介する次第です。まず、その部分から。
 デューク大学を休学して19歳で北京師範大学に留学した著者は、共通の音楽趣味がきっかけで知り合ったZhang、通称ジョンとその家族と親しくなる。ある日、その家に上がり込んで著者が北京晩報を読んでいるところに、カセットテープを抱えて飛び込んできたジョンの口から出たのは…「中国のボブ・ディランを見つけた!」 という言葉だった。
  2人はカセットで「一無所有」を聴き、さらに崔健のすべての曲を覚えた後、崔健が近くの公園でよく即興演奏をしているという話を聞きつけ、早速会いに行く。
  著者が自己紹介すると、崔健は「驚くほど達者な英語」で質問してきた。″What's 'American Pie' about?″と″How about 'The eagle flies on Friday, Saturday I go out to play' in the blues standard 'Stormy Monday'?″
  この2つの質問は、崔健が米国の音楽事情に詳しいだけでなく、鋭い感性と理解を持っていたことを雄弁に物語っている。というのも、実は評者自身、同じ頃にこれと瓜二つの疑問を抱いており、崔健との一致に驚いている(注1)。
 代表作「一無所有」については、英訳の歌詞全文と内容へのコメントが付されている。注目されるのは″一無所有″が英訳では Nothing To My Name で統一されている点で、ちなみに大沢真木子氏はタイトルを「俺には何もない」、歌詞中の部分を「あんたには何もない」と訳し分けている。どちらの訳にも工夫と苦心の跡が窺えるあたり、「中国のボブ・ディラン」たる崔健にふさわしいのだが、問題のキーワードに関して追及したくだりは示唆的である(注2)。
 著者はさらに、″一無所有″というフレーズの出典が中国語「インターナショナル(国際歌)」の歌詞にあるとしたうえで、″一無所有″の表現を使うことによって、崔健は共産主義革命がすべての中国人民を抑圧から解放する約束を果たすことにいまだに成功していないという「微妙な暗示」を込めていると指摘する(注3)。たしかに、崔健の真意はともかく、両者の連関に中国人の多くが気がついていた可能性はあると評者は思う。
 それから間もなく、崔健は全国レベルの作詩作曲コンテストで優勝し、中国中央テレビ(CCTV)に出演するなどして、一躍有名人となる。それまで中国で名を知られた歌手といえば、革命期に活躍した共産党推薦の流行歌手か、香港・台湾の棘のない曲を唄う歌手だけだった中国の社会にとって、崔健の登場がいかに衝撃的だったか。著者はそれについて、「エルビス、ビートルズ、ボブ・ディランがニューヨークでエド・サリバン・ショーに初出演したときと同じカタルシス(感情浄化)効果」をもたらしたと述べている。
 一方、著者は崔健についての記事が Asiaweek に採用され、記者デビューを果たすが、当局との関連で崔健の活動に問題が発生する。
 著者によれば、崔健のテレビ出演をきっかけに、政府上層部から″一無所有″の意味に関して異論が出されたほか、崔健がライブ演奏で革命歌「南泥灣」を取り上げたことが問題にされた結果、崔健は公開の場での演奏を禁止され、さらに北京交響楽団を追われることになる(注4)。
 ジョンは、「殺鶏驚猴(見せしめ)だよ」と語ったという。
 ところが、崔健はこれを転機として多国籍のメンバーから成るバンドを結成、中国で初めてのロックアルバム「新長征路上的揺滾」を世に送り出すことになる。街には崔健のアルバムの海賊版があふれ、バンドは当局の規制が緩い地方都市に活動の場を求めて、上海や遠くは新疆にまで活動範囲を広げていく。
  本の前半、1989年4月までの章には、明確な日付が示されていないが、読者は出来事の記述から、凡その時期を推定することができる。
 第9章の後半では、崔健の北京における海外の著名人を含む多彩な人物との交流も描かれており、非常に興味深いが、この紹介では、崔健の音楽の独自性として、中国北方系の「説唱」の流れを汲んでいると指摘されていることを以て、ひとまず締めくくりとしたい。ディランにも叙事詩に曲をつけた長尺の作品が集中した時期があり、それらを高く評価する専門家やファンがいることを考えると、ここでも、ある意味で崔健との並行性を看てとれると思う。
 中国が激動の渦中にあった時代の長期間に渡る記録から、ごく一部を紹介したが、改革開放から間もない1980年代初期は、まだまだ文革のいわば後遺症が生々しく残り、北京ですら外国人が珍しい眼で視られた時期だった。全編を通じて著者の良き案内役として登場するジョンも、迫害で父親を亡くし、妹が精神に異常を来した典型的な文革被害者の一人だった。崔健の章には先立つ部分では、ほかにも、心に深い傷を持ちながらも希望を失わない青年男女が描かれるほか、当時よく使われたスラングもピンイン表記で書かれるなど、生の声をよく伝えている。
 それと同時に、本書が習近平体制へと替わった現時点で出版された意味もそこにあると思われるが、80年代当時も現在も、私たちが生の現実を彼らと少しでも多く共有しようとする前に立ちはだかるカフカレスクな「壁」の存在がある。その間の事情については、麻生晴一郎氏の潮アジア・太平洋ノンフィクション賞第1回受賞作『変わる中国―「草の根」の現場を訪ねて』(潮出版社、2014年)を、本書と現在の間のギャップを埋めるルボとして一読を薦めたい。

(注1) 'American Pie'は、バディ・ホリー(Buddy Holly)らが1959年に航空機事故で死去したことに 'The day the music died' と象徴的に言及した米国文化史上、里程標的な意味を持つ曲。'Stormy Monday'について、崔健は T-Bone Walker の原曲であることはおそらく知っていただろうが、聴いたのは Allman Brothers Band か、クレム・クレムソン(Clem Clempson)が超絶的なギターソロを展開する Colosseum のどちらか(おそらく前者)ではないかと推測する。

(注2) 大沢訳は日本版「一無所有」(東芝EMI、1993年)のライナーノーツ所収

(注3) 「国際歌」の歌詞は以下のとおり

起来飢寒交迫的奴隷
起来全世界受苦的人
満腔的熱血已経沸騰要爲真理而斗争
旧世界打个落花流水奴隷們起来起来
不要説我們一無所有我們要做這天下的主人
這是最後的斗争団結起来到明天
英特納雄耐爾就一定要実現英特納雄耐爾就一定要実現
(注4) 「南泥灣」の崔健バージョンは、紅色揺滾: 中国揺滾20年精華精選輯 Red Rock Band CHINA ROCK 1985-2005 (Shantou,nd) などで聴くことができる。

文責:Jun Gonda


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資料も権田さんからご提供いただきました。
Photo 1


2

こちらは私の手元にある95年12月発行のBeijing Sceneです。↓
Photo_2

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2010年10月 4日 (月)

「自由風格」

 涙の「yahoo!チャイナモール」。最初に見たときに気になって申し込んだものがいくつかありました。

 ところが、なぜか私が申し込むもの(DVDや書籍ですが)は崔健関連グッズに限らずことごとくハズレらしく、数回のチャレンジも空しく、一無所有。。。

 その中の1アイテム、書籍「自由風格」。崔健と周国平(哲学者)の対談集です。「チャイナモール」には結構何件も載っている割には、6月頃に連続で「店の都合によりキャンセル」に遭い、もう手に入らないのか、と思いつつ忘れていたのですが、暫くたって「諦めないで」の天の声が。。。

 それで最近、3ヶ月ぶりに申し込んでみると、おや、翌日になっても「キャンセルメール」が届かない!もしやこれは。。。と思っていたら、約2週間たち、届きました!送料込みで2106円。昨日から読み始めましたが非常に面白く、読み応えもあります。

 版権にふれてはいけないので、今後何らかの形でご紹介できればと思います。

 

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2010年7月 9日 (金)

「中国語ジャーナル」 本日発売

 「中国ミュージックシーンの歴史を塗り替えた崔健、過去と現在を語る!」・・・

 もうご覧になりましたか?「中国語ジャーナル」8月号です。表紙は「やっぱり」の胡兵(この写真に写っている腕時計が面白い。どうやら彼のオリジナル)でしたが、崔健もどっこい巻頭カラーグラビア。(欲を言えば見開きにして欲しかった。。。)「新華僑報」ではきれいにひげを剃った後の顔。こちらは剃る前の無精ひげ、貫禄がありますね。

 付録のCDに収録されているのは、5月6日の夕刻に都内のホテルで取材されたインタビューの模様です。まるで電話で話しているみたいな声に聞こえるのは、スタジオ録音ではないから仕方ないか。。。インタビュアーの声は後から別録音したんでしょうかね。いっそ崔健と電話で話しているのだと思って聞いてみましょう。。。そしてやっぱり、北京式のあまり口を大きく開けないしゃべり方、しかも早口なんだ。。。聞き取りにくい。。。だからリスニングのトレーニングにお薦め!そして崔健は、インタビューでは大抵、いつもこのような話し方です。

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2010年6月14日 (月)

月刊「中国語ジャーナル」8月号

アルクの「月刊中国語ジャーナル」に崔健の取材の模様が掲載されます。

もう一人のインタビューが胡兵、だとすると表紙は果たして誰??。。。石かタマゴか。。。アルクのセンスが問われる???

初級からプロまで、使える中国語が満載
月刊中国語ジャーナル 2010年8月号
2010年7月9日(金)発売
本誌(CD付)1,280円(税込)

特 集

言いたい! 聞きたい! ビジネスフレーズ100
ビジネスコミュニケーションのさまざまなシーンで、確実に「言いたい」ことを言い、「聞きたい」ことを聞くためのトレーニングをしてみましょう!

CJインタビュー

1.日本でも『遥かなる絆』など話題作に出演するモデル出身の人気タレント
  フービン(モデル・タレント)
2.「一無所有」で中国に新しい音楽をもたらした中国ロック界の父
  崔健(ミュージシャン)

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